教育資金の贈与なら、1500万円まで贈与税を無税にすることができます。
『教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度』を適用すれば、無税になります。
一般の贈与税の非課税の控除額は、110万円です。
しかし、教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度を適用すると、1500万円まで非課税です。
教育資金の範囲は、学費だけではありません。
塾や、習い事の費用も、贈与税の非課税対象です。
そんな、教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度について、ご説明します。
贈与とは?
贈与とは、タダで財産をあげると相手に伝え、相手がOKした場合に贈与が成立します。
専門用語で、財産を渡す人を贈与者(ぞうよしゃ)、財産をもらう人を受贈者(じゅぞうしゃ)といいます。
贈与者と受贈者が親族であったも、贈与は成立します。
民法
(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
贈与税とは?
贈与税とは、個人から財産を受け取ったときに発生する税金です。
法人から財産を受け取ったときは、贈与税の対象ではありません。
法人からの贈与を受けた場合には、所得税の対象となります。
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度とは?
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度とは、直系尊属(曾祖父母・祖父母・父母)から、ひ孫・孫・子へ学費など、教育費を贈与したときに非課税となる制度です。
教育資金の非課税控除額は、最大1500万円まであります。
・直系尊属
父母、祖父母、曾祖父母など、自分より前の直通する親族。
(子や孫は直系卑属といいます)
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税の要件
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税の要件は、年齢、金額、贈与金銭の使い道です。
受贈者の年齢 | 30歳未満 | |
---|---|---|
受贈者の所得 | 所得金額1000万円以下 | |
贈与者 | 受贈者の直系尊属(曾祖父母・祖父母・父母等) | |
対象となる財産 | 教育資金に充てるための金銭 | |
主な教育資金 | ⑴学校などに支払われる入学金の費用
⑵塾や習い事などの学校等以外の者に支払われる金銭のうち一定のもの |
|
非課税となる金額 (非課税拠出額) |
受贈者1人につき1,500万円まで
(塾や習い事など、学校等以外は500万円まで) |
|
制度を手続きする場所 | 金融機関(銀行又は信託銀行等)に信託等に申告書を提出する | |
制度対象期間 | 2013年4月1日から2021年3月31日まで |
受贈者の年齢は30歳未満が原則
受贈者の年齢は30歳未満が原則です。
金融機関に、教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税の申告書を提出するタイミングで、年齢判断をします。
受贈者の合計所得金額は1000万円以下
受贈者の合計所得金額は、1000万円以下が要件です。
(平成31年度税制改正により追加)
所得金額とは、収入から経費を差し引いた後の金額です。
贈与者は受贈者の直系尊属に限定される
贈与者は受贈者の直系尊属に限定されます。
父母、祖父母、曾祖父母などが対象です。
叔父、叔母などは、直系尊属ではありませんせん。
なので、叔父、叔母などからの贈与は、非課税制度の対象外となります。
非課税対象となる贈与財産はお金又は投資信託が対象
非課税対象となる贈与財産は、お金又は投資信託などが対象となります。
土地や貴金属などの贈与財産は、非課税対象外です。
教育資金の用途は教育関連の費用全般が対象となる
教育資金の用途は、教育関連の費用全般が対象です。
学費以外にも、コンクールの参加費用や塾代などの教育費用も、対象となります。
学校等に対して直接支払われる費用は1500万円が限度額
学校等に対して直接支払われる費用は、1500万円が限度額です。
主な、学校等に直接支払われると認められる費用
① 入学金,授業料,入園料,保育料,施設設備費又は入学(園)試験の検定料など
② 学用品費,修学旅行費,学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など
学校等以外に直接支払われる費用は500万円が限度額
学校等以外に直接支払われる費用は、500万円が限度額です。
主な、学校等以外に直接支払われると認められる費用
(役務提供又は指導を行う者(学習塾や水泳教室など)に直接支払われるもの)
①教育(学習塾,そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料など
② スポーツ(水泳,野球など)又は文化芸術に関する活動(ピアノ,絵画など)その他
教養の向上のための活動に係る指導への対価など
③の役務提供又は④の指導で使用する物品の購入に要する金銭
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税の手続きは金融機関で行う
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税の手続きは、金融機関で行います。
贈与税は、税務署が管轄する税金です。
しかし、非課税制度の申請窓口は金融機関になります。
税務署で、申請手続きをする必要はありません。
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度は2021年までの特例
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度は、2021年までの特例措置です。
2021年までに、制度の適用申請をしないと、非課税制度を受けることはできません。
教育資金は教育関連の費用であればほとんどが対象
教育資金は、教育関連の費用であれば、ほとんどが対象となります。
学校等の範囲は、幼稚園から大学まで幅広い
学校等の範囲は、幼稚園から大学まで幅広いです。
文部科学省のHPでは、学校等を以下のように説明してます。
<「学校等」とは>
・学校教育法上の幼稚園,小・中学校,義務教育学校,高等学校,中等教育学校,特別支援
学校,高等専門学校,大学,大学院,専修学校,各種学校
・外国の教育施設
〔外国にあるもの〕その国の学校教育制度に位置づけられている学校,日本人学校,私立
在外教育施設
〔国内にあるもの〕インターナショナルスクール(国際的な認証機関に認証されたもの),
外国人学校(文部科学大臣が高校相当として指定したもの),外国大学の日本校,国際連
合大学
・認定こども園又は保育所 など
学校以外の教育資金は一般的な習い事が対象となる
学校以外の教育資金は、一般的な習い事が対象となります。
具体的な習い事の種類の指定は、ありません。
習い事をするための交通費などに関しても、教育資金の対象となります。
(2)学校等以外に対して直接支払われる次のような金銭で社会通念上相当と認められるもの
<イ 役務提供又は指導を行う者(学習塾や水泳教室など)に直接支払われるもの>
③ 教育(学習塾,そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料など
④ スポーツ(水泳,野球など)又は文化芸術に関する活動(ピアノ,絵画など)その他
教養の向上のための活動に係る指導への対価など
⑤ ③の役務提供又は④の指導で使用する物品の購入に要する金銭
<ロ イ以外(物品の販売店など)に支払われるもの>
⑥ ②に充てるための金銭であって,学校等が必要と認めたもの
⑦ 通学定期券代
⑧ 留学渡航費,学校等に入学・転入学・編入学するために必要となった転居の際の交通費
23歳以上の受贈者は教育資金の範囲が狭くなる
23歳上の受贈者は、教育資金の範囲が狭くなります。
23歳以上の者の教育資金の範囲
- 学校等に支払われる費用
- 学校等に関連する費用(留学渡航費等)
- 学校等以外の者に支払われる費用で、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するために支払われるもの
贈与を受けた教育資金を使い切らなかった場合には贈与税の対象となる
贈与を受けた教育資金を、使い切らなかった場合には、贈与税の対象となります。
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度は、年齢制限があります。
期限の年齢までに使い切らなかった贈与資金は、贈与税の対象となります。
受贈者の年齢が30歳に達した時点で特例制度終了
受贈者の年齢が30歳に達した時点で、特例制度が終了になります。
ただし、一部条件を満たすことにより、年齢制限を延長することができます。
受贈者の年齢が30歳に達した場合の例外
受贈者の連来駕30歳に達した場合の例外があります。
例外規定に該当する場合には、40歳まで教育資金の非課税対象です。
- 30歳到達時において、学校等に在学している
- 30歳到達時点において、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している
※1又は2に該当する期間がなかった場合には、その年の年末に、その時点の残高に対して贈与税を課税
することになります。
贈与税の計算は1月から12月までに贈与を受けた合計金額
贈与税の計算は、1月から12月までに贈与を受けた、合計金額で計算します。
使い切らなった教育資金があった場合、その年分の贈与金額と合算することになります。
使い切らなかった教育資金の贈与・・・500万円
1月から12月までに受けた贈与・・・100万円
500万円+100万円=600万円(贈与税の対象金額)
贈与者が死亡した場合の例外規定
贈与者が死亡した場合の例外規定があります。
贈与者の相続開始前3年以内に行われた贈与は、相続開始時での教育資金の残高を、相続財産に加算します。
ただし、いずれかに該当する場合には、相続財産に加算されません。
- 23 歳未満である場合
- 学校等に在学している場合
- 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合
教育資金の贈与についてよくある質問
教育資金の贈与について、よくある質問について説明します。
扶養している子への教育資金はすべて非課税
扶養している子への教育資金は、すべて非課税です。
一緒に生活している両親が子どもの学費等を支払う場合、教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度を適用する必要がありません。
(そもそもが非課税対象の贈与なので)
相続税法
(贈与税の非課税財産)
第二十一条の三 次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
一 法人からの贈与により取得した財産
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
三 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが贈与により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの
相続税法基本通達
(「教育費」の意義」)
21の3-4 法第21条の3第1項第2号に規定する「教育費」とは、被扶養者の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費等をいい、義務教育費に限らないのであるから留意する。(平15課資2-1改正)
扶養義務者ではない親族からの教育資金は贈与税の対象
扶養義務者ではない、親族からの教育資金は、贈与税の対象となります。
例えば、田舎の祖父母が孫の入学金を工面(くめん)した場合には、入学金は贈与税の対象となります。
その場合、教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度を利用することで、贈与税を非課税にできます。
教育資金を教育資金以外の目的に使用した場合には贈与税の対象
教育資金を教育資金以外の目的に使用した場合には、贈与税の対象となります。
贈与税の対象となる時期は、教育資金口座に係る契約終了の時点です。
教育資金として使用した費用の領収書は口座開設した金融機関に提出
教育資金として使用した費用の領収書は、口座開設した金融機関に提出します。
領収書の提出がないと、教育資金として使用した費用と認められません。
金融機関への領収書の提出期限は、2種類あります。
- 教育資金を支払った後、その実際に支払った金額を教育資金管理契約に係る口座から払い出す方法(のみ)をその口座からの払出方法として選択した場合
⇒領収書等に記載された支払年月日から1年を経過する日 - 1以外の方法を、教育資金管理契約に係る口座の払出方法として選択した場合
⇒領収書等に記載された支払年月日の属する年の翌年3月 15 日
税務署は教育資金の贈与をシビアにチェックする
税務署は、教育資金の贈与をシビアにチェックします。
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度ができる以前は、教育の資金援助の贈与判断は、割とうやむやでした。
しかし、教育資金の非課税制度ができた後は、税務署は教育の資金援助を贈与税の対象とします。
富裕層、サラリーマン層は関係ありません。
税務署は、贈与事実が確認すれば税務調査を行います。
リスクの高い脱税行為は、危険です。
教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度を利用し、合法的に節税しましょう!
ご参考になれば幸いです!
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