結婚や子育ての資金援助をしてもらうなら非課税制度を活用すべき

結婚や、子育ての資金援助をしてもらうなら、非課税制度を活用すべきです。

結婚式の費用の資金援助をしてもらった場合には、贈与税の対象となります。

子育て資金も、扶養義務者でなければ、贈与税の対象です。

しかし、『結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度』を適用すれば、最大1000万円まで贈与税が無税となります!

(結婚資金は300万円が限度)

そんな、結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度について、ご説明します。

贈与とは?

贈与とは、タダで財産をあげると相手に伝え、相手がOKした場合に贈与が成立します。

専門用語で、財産を渡す人を贈与者(ぞうよしゃ)、財産をもらう人を受贈者(じゅぞうしゃ)といいます。

贈与者と受贈者が親族同士であっても、贈与は成立します。

民法

(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

贈与税とは?

贈与税とは、個人から財産を受け取ったときに発生する税金です。

法人から財産を受け取ったときは、贈与税の対象ではありません。

法人からの贈与を受けた場合には、所得税の対象となります。

結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度とは

結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度とは、20歳以上50歳未満の受贈者が、結婚・子育て資金に充てるための資金を援助してもらった場合に、非課税となる制度です。

結婚・子育て資金の非課税制度の要件

結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の、贈与税の非課税制度の要件は、年齢、金額、贈与金銭の使い道です。

受贈者の年齢 20歳以上50歳未満
受贈者の所得 所得金額1000万円以下
贈与者 受贈者の直系尊属(祖父母・父母など)
対象となる財産 結婚・子育てに充てるための金銭等
主な結婚・子育て費用 ⑴結婚の挙式費用、衣装代、新居の費用

⑵不妊治療費、分娩代、保育料(ベビーシッター代を含む)

非課税となる金額
(非課税拠出額)
受贈者1人につき1,000万円まで

(結婚費用は300万円まで)

制度を手続きする場所 金融機関(銀行又は信託銀行等)に非課税申告書を提出する
制度対象期間 2015年4月1日から2021年3月31日まで

受贈者の年齢は20歳以上50歳未満

受贈者の年齢は、20歳以上50歳未満です。

未成年者や、50歳以上で贈与を受けた場合、非課税制度対象外となります。

受贈者の合計所得金額1000万円以下

受贈者の合計所得金額は1000万円以下と、制限があります。

所得金額とは、収入から経費を差し引いた金額です。

給与所得や事業所得など、合計金額が1000万円を超える場合には、非課税制度適用外となります。

贈与者は受贈者の直系尊属(祖父母・父母など)

贈与者は、受贈者の直系尊属でなくてはいけません。

直系尊属とは、自分よりも前の世代で直通する親族です。

祖父母、父母が直系尊属に該当しますが、叔父叔母は直系尊属に該当しません。

非課税金額は受贈者1人につき1,000万円まで

非課税金額は、受贈者1人につき1,000万円までです。

ただし、結婚費用に関しては、非課税限度額が300万円までとなります。

制度を手続きする場所は金融機関(銀行又は信託銀行など)

制度を手続きする場所は、銀行や信託銀行などの金融機関になります。

贈与税は税務署の管轄する税金ですが、非課税制度の申請は、金融機関で行うことになります。

対象期間2015年4月1日から2021年3月31日まで

非課税制度の対象期間は、2015年4月1日から2021年3月31日までとなります。

この期間以外の贈与に関しては、非課税制度の対象外となります。

非課税制度の対象となる結婚費用と対象外の結婚費用

非課税制度には、対象となる結婚費用と対象外の結婚費用があります。

内閣府が公表している、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置に基づき、ご説明します。

非課税制度に該当する結婚費用

非課税制度に該当する結婚費用は、3点あります。

  1. 結婚式当日に直接発生する費用
  2. 結婚に伴う居住費
  3. 結婚に伴う引っ越し代

受贈者の結婚に際して支出する費用

  1. 挙式や結婚披露宴を開催するために要する挙式代、会場費など(入籍日の1年前以後に支払われたものに限る。)
  2. 結婚を機に新たに住む物件の家賃、敷金、共益費、礼金、仲介手数料、契約更新料(入籍日の1年前後
    以内に締結した賃貸借契約に関するものに限る。また、当該契約締結日から3年を経過する日までに支払われたものが対象となる。)
  3. 結婚を機に移り住む住居先に転居するための引っ越し代(入籍日の1年前後以内に行ったものに限る。)

非課税制度に該当しない結婚費用

非課税制度に該当しない結婚費用は、3点になります。

  1. 結婚式当日以外に発生する費用
  2. 新居の維持管理費や設備費
  3. 引っ越し業者以外に依頼する費用

非課税制度に該当しない費用

  1. 結婚情報サービスの利用など婚活に要する費用、両家顔合わせ・結納式に要する費用、指輪代、エステ代、交通費・宿泊費、新婚旅行代
  2. 地代、光熱費、家具・家電など設備購入費
  3. 不用品の処分代、引越しのためのレンタカー代、友人に頼んだ場合の費用

非課税の対象となる子育て費用と対象外の子育て費用

非課税制度には、対象となる子育て費用と、対象外の子育て費用があります。

内閣府が公表している、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置に基づき、ご説明します。

非課税制度に該当する子育て費用

非課税制度に該当する子育て費用は、3点になります。

  1. 妊娠にかかる費用
  2. 出産にかかる費用
  3. 育児にかかる費用

公的助成(市区町村からのお祝い金)などを受けている場合でも、実際に支払った額は、非課税対象となります。

受贈者の妊娠、出産又は育児に要する費用

  1. 妊娠に要する費用
    ① 人工授精など不妊治療・医薬品(処方箋に基づくものに限る。)に要する費用
    ②妊婦健診、妊娠に起因する疾患の治療・医薬品(処方箋に基づくものに限る。)に要する費用
  2. 出産に要する費用
    ① 分べん費、入院費、新生児管理保育料、検査・薬剤料、処置・手当料及び産科医療補償制度掛金など出産のための入院から退院までに要する費用。産婦健診、出産に起因する疾患の治療・医薬品(処方箋に基づくものに限る。)に要する費用
    ② 出産後1年以内に支払われた産後ケアに要する費用(6泊分又は7回分に限る。)
  3. 育児に要する費用
    ① 未就学児の子の治療、予防接種、乳幼児健診、医薬品(処方箋に基づくものに限る。)に要する費用
    ② 保育園、幼稚園、認定こども園、ベビーシッター業者等へ支払う入園料、保育料、施設設備費、入園試験の検定料、行事への参加や食事の提供など育児に伴って必要となる費用

非課税制度の対象外となる子育て費用は小学生以上の子に対する費用

非課税制度の対象外となる子育て費用は、小学生以上の子に対する費用です。

子育て資金は、未就学児までが対象で、小学生以上の子どもに対しての子育て費用は対象外となります。

なお、小学生以上の子どもに対しての教育資金については、『教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度』を適用することが可能です。

配偶者の妊娠・出産費用も対象となる

配偶者の妊娠・出産費用も対象となります。

夫が夫の父から結婚・子育て資金の贈与を受け、贈与資金を妻の出産費用に充てても、非課税制度に該当します。

結婚・子育て非課税制度の終了のタイミングは50歳と贈与者の死亡

結婚・子育て非課税制度の終了のタイミングは、受贈者の50歳の年齢と贈与者の死亡です。

受贈者は50歳の時点で、非課税資金を使い終わっていない場合は、残額が贈与税の対象となります。

受贈者が50歳未満であっても、贈与者が死亡した場合には、非課税制度は終了となります。

受贈者が50歳に達するまでに使い切らなかった残額は贈与税の対象

受贈者が、50歳に達するまでに使い切らなった残額は、贈与税の対象となります。

対象となる年分は、50歳に達した年です。

同年中に贈与を受けた場合には、贈与財産を合算して、贈与税の計算を行います。

結婚・子育て資金として残額が300万円と50歳に達した年に200万円の贈与を受けた場合

 

 

300万円+200万円=500万円⇒贈与税の課税価格

 

※贈与税の基礎控除額などは、その時点の法律に基づきます。

受贈者が死亡した場合には非課税制度終了

受贈者が死亡した場合には、非課税制度は終了となります。

死亡時点までの残額については、贈与税の対象外です。

(残額は、受贈者の相続財産として計算します)

贈与者が死亡した場合の残高は贈与者の相続財産に加算する

贈与者が死亡した場合の残高は、贈与者の相続財産に加算します。

相続税には基礎控除額があり、相続税の基礎控除額を超える相続財産がある場合には、相続税の申告が必要となります。

相続税の基礎控除額

 

3000万円+600万円×法定相続人の人数=相続税の基礎控除額

結婚・子育て資金の残高は相続税の2割加算の対象とならない

結婚・子育て資金の残高は、相続税の2割加算の対象となりません。

相続税の計算上、孫やひ孫が相続した財産に対しては、相続税が2割加算されます。

しかし、結婚・子育て資金の残高については、2割加算の対象外です。

結婚・子育て資金の贈与についてよくある質問

結婚・子育て資金の贈与について、よくある質問について説明します。

扶養している子の生活費は非課税

扶養している子の生活費は、すべて非課税です。

通常必要と認められる、生活費は非課税ですので、結婚・子育て非課税制度を利用する必要はありません。

相続税法

(贈与税の非課税財産)
第二十一条の三 次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
一 法人からの贈与により取得した財産
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
三 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが贈与により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの

 

相続税法基本通達

生活費等で通常必要と認められるもの)
21の3-6 法第21条の3第1項第2号に規定する「通常必要と認められるもの」は、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいうものとする。(平15課資2-1改正)

扶養義務者ではない親族からの生活費の資金は贈与税の対象

扶養義務者ではない、親族からの生活費の資金は、贈与税の対象となります。

両親や、祖父母からの贈与であっても、扶養義務者以外からの生活費の資金援助は贈与税の対象となります。

結婚・子育て資金以外に目的で非課税制度を使用することはできない

結婚・子育て資金以外の目的で非課税制度を利用することはできません。

金融機関に、結婚・子育て資金の専用口座を開設しますが、目的外の出金はできません。

結婚・子育資金として使用した費用の領収書は口座開設した金融機関に提出

結婚・子育て資金として使用した費用の領収書は、口座開設した金融機関に提出します。

領収書の提出がないと、教育資金として使用した費用と認められません。

金融機関への領収書の提出期限は、2種類あります。

  1. 結婚・子育て資金を支払った後、実際に支払った金額を結婚・子育て資金管理契約に係る口座から払い出す方法(のみ)をその口座からの払出方法として選択した場合
    ⇒ 領収書等に記載された支払年月日から1年を経過する日
  2. 1以外の方法を、結婚・子育て資金管理契約に係る口座の払出方法として選択した場合
    ⇒ 領収書等に記載された支払年月日の属する年の翌年3月15日

 

結婚・子育て非課税は使い勝手のいい非課税制度

結婚・子育て非課税は、使い勝手のいい非課税制度です。

結婚・子育て資金の非課税制度は、2021年3月31日までです。

しかし、結婚式を挙げる予定があれば、300万円以内は資金援助してもらっても非課税です。

子育てに関しては、ほとんどが非課税対象となる資金です。

出産に伴う費用は、確実に発生しますので、非課税資金の用途に困ることもありません。

税務署に見つかるリスクよりも非課税制度を利用した方が楽

税務署に見つかるリスクよりも、非課税制度を利用した方が楽です。

税務署は、贈与税の申告が無いことを確認できれば、税務調査をします。

税務調査によって、贈与税を申告した場合、贈与税以外に、罰金(加算税・延滞税)を支払う必要があります。

申告しないだけで、余計な税金を支払うのはもったいないですよね。

リスクのある無申告ではなく、非課税制度を利用して、確実な節税方法を選択しましょう!

ご参考になれば幸いです!

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