所得税の扶養控除で節税!条件や注意点、年末調整について

所得税で扶養控除は節税可能な控除です。

難しい条件ありませんし、注意点に気をつければ、大きな節税も可能です。

また、サラリーマンであれば、確定申告をしないで年末調整のみで節税することもできます。

そんな扶養控除について、元税務署職員が説明していきます。

目次

扶養控除とは?

扶養控除は、親族を養っている人に適用される所得控除です。

扶養控除が適用されるかは、以下を確認する必要があります。

  • 養われている人が「親族」に該当するか
  • 養われている人が「扶養親族」に該当するか

養っている人が親族(以下で詳しく説明)なら、扶養控除が適用されるか調べた方がいいでしょう。

金額は、扶養親族や人数によって異なります。

  • 扶養親族には4つの種類があり、それぞれ控除額が異なる
  • 扶養親族の人数分適用される

これらの内容を、以下で詳しく解説していきます。

親族の範囲

原則、養われている人は親族に限定され、人数が多ければ控除額も大きくなります。

親族の範囲は広く、6親等内の血族又は、3親等以内の姻族です。

血族とは自分の子どもから、はとこまでの親族が対象

血族とは、自分の血の繋がった親族です。

自分に近い人親戚ほど、親等数が小さく、遠い親戚ほど親等数が大きくなります。

一番遠い親戚で、はとこまでが扶養控除の対象となる親族となります。

6親等内の血族一覧

 

1親等・・・父、母、子

2親等・・・孫、祖父、祖母、兄弟姉妹

3親等・・・ひ孫、甥姪、曾祖父母、おじ・おば

4親等・・・いとこ、甥姪の子、おおおば(祖父母の姉妹)、おおおじ(祖父母の兄弟)

5親等・・・いとこの子、甥姪の孫

6親等・・・はとこ、いとこの孫

姻族とは婚姻によって新たにできた親戚

姻族とは、結婚によって繋がった親戚です。

自分の結婚相手の家族は、血族ではなく、姻族となります。

自分の兄弟姉妹の配偶者に関しても姻族です。

3親等内の姻族一覧

 

1親等・・・子の配偶者、配偶者の両親

2親等・・・孫の配偶者、兄弟姉妹の配偶者、配偶者の兄弟姉妹、配偶者の祖父母

3親等・・・ひ孫の配偶者、甥姪の配偶者、おじ・おばの配偶者、配偶者の曾祖父母、配偶者のおじ・おば、配偶者の甥姪、

配偶者に親等は無く扶養控除の対象者にならない

配偶者(夫又は妻)に親等はなく、配偶者は扶養控除の対象外です。

その代わり配偶者控除がありますので、そちらを適用することになります。

扶養控除は扶養する人数分だけ控除が可能

扶養控除は、扶養対象者となる人の一人一人に控除額があります。

扶養控除額は扶養される人(被扶養者)の現状によって異なります。被扶養者1人あたり38万円から最高63万円の控除です。

扶養控除は、申告する人の収入は関係ありません。収入が100万円でも1億円の人でも実際に扶養している人がいれば、扶養控除を適用することができます。

扶養控除対象 所得控除額(住民税控除)
①一般の控除対象扶養親族 38万円(33万円)
②特定扶養親族 63万円(45万円)
③老人扶養親族(同居老親等以外の者) 48万円(38万円)
④老人扶養親族(同居老親等) 58万円(45万円)

①一般の控除対象扶養親族

扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。

②、③、④に該当しない16歳以上の被扶養者はすべてこちらの該当となります。

扶養控除額は、被扶養者一人あたり38万円です。

②特定扶養親族

控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人をいいます。

(大学生程度の年齢を想定した扶養控除です)

①とは違い、被扶養者一人あたり63万円が扶養控除額となります。

③老人扶養親族(同居老親等以外の者)

控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。

ポイントとしては、同居していない親族であること。

①や②については、同居の有無は関係ありません。しかし、70歳以上の扶養親族になると同居の有無で控除額が異なります。

被扶養者一人あたり48万円が扶養控除額となります。

④老人扶養親族(同居老親等)

同居老親等とは、老人扶養親族(その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人)のうち、納税者又はその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者と普段同居している人をいいます。

同居していない場合は、控除額が48万円ですが、同居している場合につきましては、一人あたり58万円が扶養控除額となります。

扶養控除に該当する要件は養われる人の現況で判断する

所得税の扶養控除は、申告する人(納税者)自身には要件はありません。

扶養される扶養親族の現状により、扶養控除の対象かどうかを判断します。

扶養親族に該当するかは、12月31日時点の現況で判断する

扶養親族とは、その年の12月31日の時点で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です。

(1) 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。

(2) 納税者と生計を一にしていること。

(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)

(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

⑴については、被扶養者が自分の親族であれば、問題ありません。

『生計を一』とは、一緒に生活をしている家族をいいます。

扶養親族は、収入があっても、一定金額いないであれば該当します。

パートやアルバイトなど、給与収入なら103万円、合計所得で38万円以下であれば、扶養親族の対象となります。

青色申告・白色申告とは、自営業をしている人です。

家族で自営業をしている場合、配偶者が専属で手伝う場合には、別途控除があります。

そのため、扶養控除からの適用からは除外されます。

扶養控除の節税効果は収入が多い人ほど効果がある

扶養控除は所得控除です。

所得控除は、所得税率を計算する前に控除します。

・所得税の計算式

所得金額-所得控除額=課税対象金額

課税対象金額×所得税率-税額控除=所得税

※2037年までは所得税の金額2.1%乗じた金額が復興特別所得税として課されます。

所得税は累進課税方式で課税対象金額が大きいほど税率が高くなる

所得税は累進課税方式です。

累進課税方式とは、課税対象金額が大きいほど税率が高くなる方式です。

同じ所得控除額であっても、課税される所得金額が大きいと、節税になる所得税の金額も多くなります。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

 

扶養控除は全14種類ある所得控除の一つ

所得控除は、全14種類存在します。

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 寄附金控除
  • 障害者控除
  • 寡婦(寡夫)控除
  • 勤労学生控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 基礎控除

扶養控除は、所得控除の一つです。

非居住者の人は、14種類の所得控除のうち、雑損控除、寄附金控除、基礎控除の3つのみが、控除可能となります。

扶養控除の計算例

扶養控除の適用例を2つご紹介します。

ケース1

・16歳高校生と20歳の大学生の子どもが2人いる場合

 

16歳の高校生は一般の控除対象扶養親族となりますので、扶養控除額は38万円。

20歳の大学生は特定扶養親族に該当しますので、扶養控除額は63万円。

 

38万円+63万円=103万円(扶養控除額)

ケース2

・同居している母(70歳以上)と別居している叔母(70歳以上)がいる場合

 

同居している扶養親族は、老人扶養親族(同居老親等)に該当するので、扶養控除額は58万円。

同居していない扶養親族の場合は、老人扶養親族(同居老親以外)に該当するので、扶養控除額は48万円。

 

58万円+48万円=106万円(扶養控除額)

扶養控除で一番注意すべきは生計を一にしている親族の判断

所得税の扶養控除を適用する場合に一番気をつけるポイントは、生計を一にしているかどうかの判断です。

生計を一は必ずしも同居している必要はない

生計を一は、必ずしも同居している必要はありません。

国税庁は、『生計を一にする』を以下のような見解を示しています。

2-47 法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。

(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。

 イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合

 ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合

(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。

出典:国税庁 所得税基本通達

『生計を一にする』のポイントを要約しますと、3点になります。

  1. 原則同居している家族であること
  2. 別居の場合でも生活費を工面している場合はOK
  3. 明らかに生活が別々の場合には同居していてもダメ

生活費を一緒に支払っていれば生計を一と判断する

基本的には、一緒に住んでいる親族が前提です。

同居していない場合であっても、生計を一と判断する場合があります。

それが、生活費を工面(くめん)している親族がいる場合です。

具体的には、一人暮らしをしている大学生の子どもに仕送りしている場合や、介護施設に入居し、入居資金を工面している両親などが該当します。

税務署では生活するお財布が一緒と表現しています。

生計を一で重要なのは誰のお金で生活をしているか

『生計を一にする』の判断は、生活費を誰が支払っているのかです。

たとえ同居していた場合でも、生活費を家族それぞれで支払っている場合には、生活基盤が違うと判断され、扶養親族の対象とはなりません。

両親と同居していた場合、父は年金の収入があり母が収入が無いケースはあります。

母の生活費を工面している場合には、母を扶養親族として扶養控除対象となります。しかし、母の生活費は父が出している場合には、扶養親族には該当しませんので注意してください。

扶養控除の節税ポイントは別居と無職の親族がいる場合

扶養控除の控除は、別居でも収入があっても、扶養親族に該当します。

扶養親族は12月31日時点の現状で判断します。

年始めは扶養から外れていた親族も、12月31日時点で扶養していれば扶養控除の対象となります。

別居している学生も仕送りしていれば扶養親族になる

別居している学生の子どもに仕送りをしている場合には生計を一との判断となります。

子どもの合計所得金額が38万円以下であれば、扶養親族の要件を満たしますので、扶養控除適用可能となります。

途中で仕事を辞めた親族も扶養控除の対象

年始めは扶養をしていない親族でも、年間で所得金額が38万円以下であれば、扶養親族の対象になります。

給与所得の場合、収入で103万円が基準となります。

年収300万であれば、4か月分の給料が目安です。

4月まで会社に勤務し、退職後収入が無い場合には、収入が103万円(所得金額38万円)以下になるケースが多いです。

年の途中から働き始めても、給料が年間103万円以内であれば扶養控除の対象となります。

一方で、年の途中までは扶養親族でも、年末に結婚し扶養者が変わった場合には扶養控除の対象外となりますので注意してください。

扶養控除は年末調整で扶養親族の人数を申請をする

扶養控除は12月31日時点の現状で判断します。

会社員であれば、会社の年末調整で申請をします。

それ以外の方は、確定申告書に扶養親族の人数を記載します。

年末調整の時点では12月31日時点の見込みの扶養親族で申請をする

扶養控除は12月31日時点の現況で判断をします。

年末調整は大体11月ごろに行いますので、その時点では扶養親族に該当しない場合もあります。

その場合には、見込みで年末調整を行います。

見込みと実際の扶養親族の人数が変わった場合には確定申告書を提出することになります。

確定申告期間は翌年の2月16日から3月15日まで

確定申告期間は、翌年の2月16日から3月15日です。

確定申告期間中に、確定申告書を提出することになります。

ただし、提出する申告書が、還付申告書の場合には、翌年1月4日から提出が可能です。

確定申告は最大5年間遡って申告書を提出することができる

確定申告書は、最大5年間は、遡(さかのぼ)って提出することが可能です。

2019年(平成31年、令和元年)中であれば、2014年(平成26年)までの確定申告は提出可能です。

昔の年末調整で、扶養親族を漏れていた場合でも、期限後申告書と提出すれば、還付金を受け取れる場合があります。

(すでに確定申告書を提出した場合には、更正の請求書を提出することになります)

12月31日時点で扶養親族が減った場合も確定申告書の提出は必要

会社で年末調整をしても、扶養親族が減った場合には、確定申告書の提出が必要です。

扶養親族の判断は12月31日時点となりますので、年末調整で扶養親族から外すのが間に合わなかった場合には確定申告で訂正する必要があります。

子どもが結婚した場合や、生計が別となった扶養親族がいた場合は注意してください。

税務署は積極的に節税を教えないので自分で知識を得ることが大事

税金の支払いは少ない方がいいですよね。税務署職員もその部分は同じ感覚を持っています。

しかし、税務署職員は節税について教えることはしません。

積極的に節税の説明をしても、税務署職員にはメリットがありませんので。

特に気をつけたいのが、節税できるとわかっていても、説明しない職員もいます。

なので、自分で節税の知識を覚えないと、税金面で損をします。

扶養控除は難しい計算は必要ありません。

  • 生活が一緒であること
  • 養っていること
  • 養われている人に収入がないこと

この3点該当すれば、扶養親族の対象となります。

一度確認をして、節税対策をしてください!

参考になれば幸いです!

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